Surabaya Lab.

2026-07-01

ディーラーは何%でバーストするのか。ブラックジャックの最終スコア分布を無限デッキ仮定で厳密計算した

この記事について

SURABAYA LAB.ではふだん競馬の3連単オッズを分析していますが、今回は少し趣向を変えて、カジノゲームの中でも数理的な構造がはっきりしているブラックジャックを取り上げます。テーマは「ディーラーは最終的にどんなスコアで着地するのか、そしてどれくらいの確率でバースト(21点超えで失格)するのか」です。

感覚的には「ディーラーは6のとき狙い目」「10やAは硬い」といった経験則がよく語られますが、本記事ではそれを勘や伝聞ではなく、無限デッキ(各ランクを独立・置換ありで引けるとみなす近似)を仮定した厳密な確率計算で裏付けます。

前提条件

  • 無限デッキ仮定: 1回のドローで出るランクは、直前に何を引いたかに関係なく常に同じ確率(2〜9はそれぞれ1/13、10・J・Q・K(10価値)はまとめて4/13、Aは1/13)で独立に決まるとみなす。実際のカジノは有限枚数のシュー(6〜8デッキ)を使うため厳密には確率がわずかに変動するが、ラウンド序盤ではこの近似の誤差はごく小さい
  • スタンドルール: 主計算では最も一般的な「S17(ソフト17でもスタンド)」を採用。あわせて「H17(ソフト17はヒット)」との比較も行う
  • ソフト/ハード: エースを1枚以上含む手で、それを11として数えても21を超えない場合を「ソフト」と呼ぶ(例: A+6は「ソフト17」)。超える場合は1として数え「ハード」の手になる

数理モデル: 状態をどう表現するか

ディーラーの手札は、状態 (hard_total, has_ace) の2つの値だけで過不足なく表現できます。hard_total はエースをすべて「1」として数えた合計、has_ace は手札にエースが1枚以上含まれるかどうかのフラグです。実際にプレイに使う合計値(playable_total)は次のように決まります。

  • has_ace が true かつ hard_total + 10 が21以下のとき: playable_total = hard_total + 10(エースを11として数える=ソフト)
  • それ以外: playable_total = hard_total(エースは1として数える、またはエースなし=ハード)

この表現の利点は、エースが2枚以上あっても「+10ボーナス」は常に高々1回しか使えない(2枚とも11で数えると22を超えてしまうため)という事実と完全に一致することです。バースト条件も単純化でき、hard_total が21を超えていれば、+10ボーナスを足す前の時点で既に破綻しているので無条件にバーストになります。

スタンド/ヒットの判定はこうなります。S17ルールでは playable_total が17以上でスタンド。H17ルールでは、playable_total が「ソフトな17」(has_ace かつ playable_total = 17)のときだけヒットし、それ以外の17以上ではスタンドします。

再帰式

状態 (t, a) から先、最終的に17・18・19・20・21・バーストのどれで終わるかの確率分布を D(t, a) とします。スタンド条件を満たす場合、D(t, a) は playable_total の一点に確率1で集中します。ヒットが必要な場合は、引き得る各ランク r(確率 p_r)について、r を引いた後の新しい状態 (t', a') に遷移し、その先の分布 D(t', a') を p_r で重み付けして合算します。

D(t, a) = すべてのランクrについて p_r × D(t'(r), a'(r)) を合計したもの (ヒットする場合)

t は1回のヒットごとに必ず2以上(エースなら1)増えるため、この再帰は有限回で必ず停止します。実装上は状態数が高々数十通りしかないため、メモ化再帰(動的計画法)で厳密な分数値として計算できます。

具体例: アップカード10から1枚引いた直後

抽象的な式だけでは分かりにくいので、ディーラーのアップカードが10(hard_total=10, has_ace=false)の場合に、次の1枚を引いた直後にどうなるかを具体的に見てみます。

引いたカード確率新しい合計判定
21/1312ヒット継続
31/1313ヒット継続
41/1314ヒット継続
51/1315ヒット継続
61/1316ヒット継続
71/1317スタンド
81/1318スタンド
91/1319スタンド
10(10・J・Q・K)4/1320スタンド
A1/1321(ソフト)スタンド

17・18・19・21 に直接着地するには、それぞれ特定の1ランク(7・8・9・A)を引く必要があり、いずれも確率1/13です。一方20に着地する経路は「10」を引く(確率4/13、10価値カードが4種類あるため)の1通りしかありませんが、この4倍の重みのぶん20だけが際立って出やすくなります。2〜6を引いた場合(合計5/13)はさらにヒットが続き、その先の分布が17〜21・バーストに再配分されます。

この後続の再配分を含めて最後まで計算すると、アップカード10のケースでは17・18・19・21に着地する確率が厳密に完全に一致するという性質が現れます(537824/4826809 = 約11.14%ずつ)。20だけがカード構成の偏り(10価値が4/13)を反映してひときわ高くなり(1651703/4826809 = 約34.22%)、残りがバースト(1023810/4826809 = 約21.21%)です。直感的には、17・18・19・21のいずれに着地するにも「特定の1ランクを引く」という同じ構造の経路しかないため、途中で何度ヒットを重ねてもこの対称性が保たれる、と理解できます。

計算結果: アップカード別 最終結果分布(S17)

同じ再帰計算を全10種類のアップカード(2〜10・A)について行った結果が次の表です。数値は「アップカードのみを見た時点」から、その後のプレイを最後まで終えた場合の最終結果の確率(%)です。

アップカード1718192021バースト
213.9813.4912.9712.4011.8035.36
313.5013.0512.5612.0311.4737.39
413.0512.5912.1411.6511.1239.45
512.2312.2311.7711.3110.8241.64
616.5410.6310.6310.179.7242.32
736.8613.787.867.867.4126.23
812.8635.9312.866.946.9424.47
912.0012.0035.0812.006.0822.84
1011.1411.1411.1434.2211.1421.21
A13.0813.0813.0813.0836.1611.53
アップカード別ディーラーバースト率(S17・無限デッキ)の棒グラフ

アップカード6のバースト率が42.32%と全アップカードの中で最大です。これは「6が最もバーストしやすい」という経験則を裏付ける結果ですが、理由は単純です。アップカードが6のとき、既に確定しているハード6に対してヒットを続ける必要がある局面が多く、かつ2枚目以降でハード合計が17を超えるまでの「安全域」が他のアップカードに比べて狭いためです。次点は5(41.64%)、4(39.45%)と、2〜6のいわゆる「スモールカード」群が軒並みバースト率40%前後に達しています。逆にAは11.53%、10は21.21%と大きく低く、7〜9のグループもおおむね22〜26%に収まっています。

各アップカードの分布の形にも特徴があります。7・8・9・10のアップカードでは、その値にちょうど対応する最終結果(それぞれ17・18・19・20)の確率が突出して高くなっています。これは、アップカードにちょうど10前後の値を1枚加えるだけで対応する合計に届き、それ以上ヒットする必要がない(=バーストのリスクを負わずに済む)ケースが多いためです。

全体の最終結果分布

各アップカードの出現確率(2〜9はそれぞれ1/13、10は4/13、Aは1/13)で加重平均すると、ディーラー全体の最終結果分布は次のようになります。

ディーラーの最終結果分布(アップカード加重平均・S17・無限デッキ)
最終結果1718192021バースト
確率(%)14.5113.9513.3518.0312.0128.16

全体のバースト率は28.16%、バーストしなかった場合の平均最終スコアは18.99点でした。「ディーラーは4回に1回以上はバーストする」という感覚は、この数字を見る限りおおむね正しいと言えます。20で着地する確率が18.03%と他の点数より高いのは、10価値カード(10・J・Q・K)が全体の4/13を占めるという構成が、あらゆるアップカードのケースで20という着地点を底上げしているためです。

ソフト17ルールの違いでどう変わるか(S17 vs H17)

ここまではディーラーが「ソフト17でもスタンドする(S17)」ルールを前提にしていました。カジノによっては「ソフト17はヒットする(H17)」ルールを採用している場合があり、これはハウスエッジに影響する代表的なルール差として知られています。同じ計算モデルでH17ルールを適用し、バースト率がどう変わるかを比較しました。

S17ルールとH17ルールのアップカード別バースト率比較
アップカードS17バースト率H17バースト率
235.36%37.25%+1.88pt
337.39%39.17%+1.78pt
439.45%41.17%+1.72pt
541.64%42.85%+1.20pt
642.32%47.91%+5.59pt
726.23%27.08%+0.85pt
824.47%25.27%+0.79pt
922.84%23.58%+0.74pt
1021.21%21.87%+0.66pt
A11.53%17.87%+6.34pt
全体(加重平均)28.16%29.97%+1.81pt

H17ルールでは全体のバースト率が28.16%から29.97%へ、1.81ポイント上昇しました。特に差が大きいのはアップカードA(+6.34pt)と6(+5.59pt)です。この2つのアップカードは、ソフト17(A+6、あるいはA+2+4のような組み合わせ)に到達しやすいアップカードであり、S17なら「そこでスタンドして生き残る」局面が、H17では「あえてもう1枚引いてバーストのリスクを負う」局面に変わるためです。他のアップカードではソフト17自体に到達する経路が少なく、差は1〜2ポイント程度にとどまっています。ディーラーのバースト率が上がるほど、確率としてはプレイヤー側に有利に働くため、「H17はプレイヤーに不利」という定説とは逆の方向に見えるかもしれませんが、実際にはH17ルールがハウスエッジを引き上げるのは、ディーラーが引き分け・敗北を回避してより高いスコアで踏みとどまる機会が増える(21に到達する確率も同時に上昇している)ためであり、バースト率の上昇だけを見て有利不利を単純に結論づけることはできません。

検証: モンテカルロシミュレーションとの照合

厳密計算(動的計画法による再帰)の正しさを確認するため、同じ無限デッキ仮定のもとでモンテカルロシミュレーション(各アップカードについて200万試行)を独立に実装し、結果を突き合わせました。全アップカード・全ルールの組み合わせで、シミュレーション結果と厳密計算値の差は0.1ポイント未満に収まっており、計算の正しさを確認できています。

この分析の見方

本記事の数値はすべて無限デッキ仮定(各ランクを独立・置換ありで引けるとみなす近似)に基づくものです。実際のカジノでは有限枚数のシュー(多くの場合6〜8デッキ)を使うため、シューの残り枚数やカードの構成によって厳密な確率はわずかに変動します。また、実在のブラックジャックにはこの記事で扱っていない要素(プレイヤー側のヒット・スタンド・ダブルダウン・スプリット・サレンダーの戦略選択、複数プレイヤーによるカードの消費、カジノごとのペイアウト倍率の違いなど)が数多く関わっており、本記事はあくまで「ディーラー単体の挙動」を数理的に切り出した分析である点にご留意ください。

※本記事は数理分析・娯楽目的の記事です。実際のギャンブル行為は自己責任でお願いします。

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