Surabaya Lab.

2026-06-25

大穴は、本当に過小評価されているのか

検証に使ったレース

理論の話が続いたので、今回は実際のレースで試した結果を書きます。

使ったのは2026年6月21日、東京11R 府中牝馬ステークスです。単勝・複勝オッズが揃っていて、3連単の実オッズも取得できていたレースです。

単勝1番人気はヴァルキリーバース(単勝3.3倍、1着確率24.1%)、2番人気はニシノティアモ(単勝5.0倍、1着確率15.9%)。ここまでは順当な並びでした。

本命サイド:売られすぎている組み合わせ

まず、モデルが「最も売れているはず」と考える組み合わせ、つまり理論オッズが最も低い組み合わせを見てみます。

1位は6→8→12(ヴァルキリーバース→ニシノティアモ→コガネノソラ)で、理論オッズは131.6倍でした。

ところが、この組み合わせの実際のオッズは67.9倍。理論の半分近くまで売れていました。期待値は0.52倍です。

人気馬同士で固める「順当な」組み合わせは、理論的な確率以上に買われやすい。これは「人気馬は過大評価されやすい」という、競馬の世界でよく言われる傾向と一致していて、モデルの計算自体が的外れではなさそうだという、一つの裏付けになりました。

大穴サイド:売れ残っている組み合わせ

次に、期待値が高かった組み合わせを見てみます。

上位に並んだのは、7→6→16、7→8→16、14→6→16、6→7→16……。

共通点に気づくでしょうか。すべて「16番」が3着に絡んでいます。

16番のセントメモリーズは、単勝215.2倍。出走馬の中でも際立った大穴でした。

このレースで最も期待値が高かったのは7→6→16で、理論オッズ2779.3倍に対し、実際のオッズは9392.5倍。期待値は3.38倍でした。

大穴が3着に来るパターンは、人気馬同士の決着に比べて「考慮されにくい」のか、市場が理論よりも高いオッズをつけたままになっていました。

散布図で見る全体傾向

府中牝馬ステークス2026 実オッズ × 理論オッズの散布図

このレースの全組み合わせ(3,360通り)を散布図にしてみました。横軸が実際の3連単オッズ、縦軸が理論オッズです(どちらも対数軸)。

点線は「理論オッズ=実オッズ」の線です。もし市場が完全に理論と一致しているなら、すべての点がこの線の上に乗るはずです。

実際には、多くの点がこの線の近くに集まっていて、モデルが大きく外れているわけではなさそうだと分かります。ただ、よく見ると線からのズレ方に偏りがあります。

赤くマークした「6→8→12」(本命サイド)は線より上側、つまり理論オッズより実オッズの方が低い側にあります。逆に「7→6→16」(大穴サイド)は線より下側、理論オッズより実オッズの方が高い側にあります。

全体を見ても、オッズが低い(人気がある)側の点は線の上側に、オッズが高い(大穴)側の点は線の下側に来る傾向がうっすらと見えます。

つまり、人気サイドは理論より売れすぎ、大穴サイドは理論より売れ残る。競馬の世界で「favorite-longshot bias(人気馬は過大評価され、大穴は過小評価されやすい)」と呼ばれる現象が、単勝・複勝から作った理論値と3連単市場の間でも、同じように現れているように見えます。

注意点:期待値と信頼度は別物

期待値が高かった組み合わせの確率は、いずれも0.01〜0.04%程度と非常に小さいものでした。このレース全体のうち、期待値2倍以上だったのは61通りで、そのほとんどが「信頼度:低」に分類されます。

期待値が大きいことと、当てやすいことは、まったく別の話です。

それでも、「人気同士は売られすぎ、大穴絡みは売られなさすぎ」という非対称性が、単勝・複勝という別々の市場から組み立てた理論値と、実際の3連単市場の間に、確かに存在していました。

これが、競馬における「裁定取引」に最も近いものなのかもしれません。

SURABAYA LAB.

← 記事一覧に戻る